Special

原作・博×主演・村上まなつ 特別対談

プロフィール

原作

『明日ちゃんのセーラー服』(既刊第1~9巻)をとなりのヤングジャンプにて絶賛連載中。
そのほかの作品に、『アクアリウム』『ゆめくり』『スーパーカブ』(挿絵)など。

明日小路 役

村上まなつ

8月24日生まれ。神奈川県出身。アライズプロジェクト所属。2018年に声優デビュー、2019年には新人女性声優によるアーティストユニット「DIALOGUE+(ダイアローグ)」に参加。本作でTVアニメ初主演を務める。

【主な出演作】
『CUE!』(九条柚葉 役)、『オッドタクシー』(三矢ユキ 役)など

  • ――村上さんは、初めて『明日ちゃんのセーラー服』の原作に触れたとき、どのような印象を持たれましたか?

    村上まなつ(以下:村上)

    本作のオーディションを受けるにあたり、その資料として読ませていただいたのが最初だったんです。
    でも、あまりにも綺麗で素敵な作品だったので、仕事だということは忘れて、のめり込みながら読んじゃいました(笑)。
    特に、女の子の何気ない仕草を、細かく何カットにも分けて描かれているところが印象的でした。
    それまで私が知らなかったような「女の子の可愛い一瞬」がたくさん詰め込まれた作品だったので、「なんて素敵な作品なんだろう~!」って、感激しちゃって(笑)。

    面と向かって感想をいただく機会はほとんどないので、ちょっと恥ずかしいですね(笑)。
    でも、女の子の描写は特に力を入れているところですし、演じる前からそれを感じてもらえていたなら、すごく嬉しいです。
    一つの動作を何カットにも分けて描くことがあるのは、僕が自分の頭の中にあるイメージを全て描きたくなっちゃうからなんですよ。
    これがもし紙媒体の雑誌での連載だったら、誌面の都合があるから削っていかないといけないんですけど……。
    『明日ちゃん』はWeb連載なので、編集さんもそういう演出にOKを出して下さって。
    しっかり見せたい動きについては、何ページもかけて綿密に描写することができています。
  • ――村上さんは、明日ちゃん役に決定したときはどんなお気持ちでしたか?

    村上

    実は、「明日ちゃん役に決まったよ」という電話をもらったとき、駅のホームにいたんですが……そのときは嬉しすぎて、人目もはばからず泣き出しちゃいました(笑)。
    周りの人たちも、なんだかちょっと引いてましたね(笑)。
    その頃はよくキャラクターの設定資料を眺めながら、「明日ちゃんって素敵だなあ、演じたいなあ……」なんて考えていたぐらいなので、本当に嬉しかったんです。
  • ――博先生は、初めて村上さんの演技を聞いた際、どんな印象を持たれましたか?

    オーディションではまず最初に、候補者の皆さんそれぞれの演技を吹き込んだ録音データをいただいたんです。
    仕事中もずっと聞き込んでいたんですが、正直なところ、録音ではよくわからない部分もあって……。スタジオオーディションの時に直接聞かせていただいた際に、もちろん上手な方がはたくさんいらしたんですが、中でも「あっ、コレは!」と思ったのが、村上さんの演技だったんです。
    監督や他の方も同じ印象だったらしく、満場一致で村上さんに決まりました。
  • ――そんなふうに思われたポイントは、何だったのでしょうか?

    明日ちゃんって、中学生までは同学年の友達がいない環境で育ってきた子なんです。
    個人の性格って、普通であれば友達との付き合いの中で「明日ちゃんは、こういう子だよね」みたいに言われて、「そうか、私ってそうなんだ」というふうにフィードバックしながら作り上げていくものだと思うんですよ。
    でも、明日ちゃんの場合はそれがなかったから、今でもまだ、あらゆる判断基準が自分の中にしかないんです。
    まだ人格がカッチリと定まっていないというか……女の子の綺麗さを褒めるときに、「透明感がある」っていうことがありますよね。
    明日ちゃんの場合はきっと、まだ内面も透明なんですね。
    自分の中に「明日ちゃんは、こういう声!」というイメージがなかったので、「あ、これが明日ちゃんの声なんだ!」って気づかされるような方がいれば、それが一番いいと思っていたんです。
    そして、まさにそれは村上さんで……間違いないと思いました。
    「綺麗な声を出そう」とか「可愛く演じよう」みたいな気負いを感じさせない、自分の声で素直に演じて下さる感じが、純粋な明日ちゃんにはピッタリだと思ったんです。
  • ――収録スタジオにも足を運ばれたということですが、いかがでしたか?

    現場に行くという経験自体が初めてだったので、どんなふうにしていれば原作者らしく見えるのかなと悩みました(笑)。
    緊張しましたね。
  • ――先生が現場にいらっしゃると、やはり声優さんも、いつも以上に緊張されるものでしょうか?

    村上

    最初のアフレコのときは「きちんと明日ちゃんを演じられるかな?」という不安もあったので、すごく緊張していたんです。
    でも、先生とお会いしたらすごく優しくお話をして下さって。
    「明日ちゃんというのは、こういう気持ちで作ったキャラクターなんです」って、いろいろ説明してくださったんです。
    だからホッとしましたし、すごく参考になりました。
  • ――博先生は、何か演技のアドバイスをされましたか?

    「変に気負って作り込まなくていいから、ありのままの、村上さんがやりたい演技を全力でやってほしい。
    それが明日ちゃんになるから」といったことをお話しました。
  • ――他にも、先生の印象に残る言葉はありましたか?

    村上

    第1話のアフレコが行われる前に、先生が直筆の、明日ちゃんのイラストをプレゼントしてくださったんです。
    そこに「精一杯の元気で」と書き添えていただいていたのが、すごく嬉しくて……。
    毎回、スタジオに向かう道中で思い出しながら、「今日も、精一杯の元気でやるぞ!」と思っていました。
    そのイラストの写真はずっと携帯に入っているので、今でもよく眺めて、元気をもらっています。
  • ――アフレコの現場は、どういった雰囲気だったのでしょう?

    村上

    こういったご時世なので、少人数ずつ集まって、少しずつ収録していくんです。
    初めて共演する方も多かったので、それこそ私も「友達100人できるかな?」の明日ちゃん精神で、皆さんにご挨拶をさせていただきました。

    僕も、村上さんと共演する方が少しずつ増えていって、自然に仲良くなっていくのを眺めているのが楽しかったですね。
    そういう様子って、まさに僕が『明日ちゃん』で描いてきたことそのままなんです。
    だからなんだか、まるで作品を追体験しているような気持になりました。
  • ――他にも、収録中の楽しい思い出があれば教えてください。

    村上

    アフレコでは雨宮天さん(木崎江利花役)、鬼頭明里さん(兎原透子役)とご一緒する機会が多かったんですが、すごく仲良くさせていただきました。
    雨宮さんは今回の現場で初めてお会いしましたし、鬼頭さんも数回しかお話したことがなかったんですけど、いつも「ここの靴が素敵だよ!」とか「この近くに美味しいパスタ屋さんがあって~」みたいに、楽しくお話させていただいて(笑)。
  • ――(笑)。作中の明日ちゃんは他人との距離が近くて、すぐに友達になっちゃうタイプですよね。村上さんもそういうところがあるのではないでしょうか?

    村上

    そうですね! どちらかといえば、どんどん話しかけちゃうタイプです。
    さすがに最近はないんですが、昔は電車でもよく、隣の席の人と話したりしてました。
    そうやって、知らないお婆さまから飴をいただいたこともありますよ(笑)。
  • ――明日ちゃん同様、まるでバリアがないんですね。そうした性格上の共通点があると、明日ちゃん役は演じやすい部分も多かったのではないでしょうか?

    村上

    そうですね。でも、明日ちゃんはクシャミをしたり、うがいをしたり、息を切らせて走ったりする生理現象の演技も多いので、そういうところは難しかったです。
    クシャミやうがいは動画を探して参考にしたり、息切れは実際に坂道ダッシュをやってみたりして、勉強しました(笑)。
    でも、特に難しかったのは、アイドル幹ちゃんの真似をして「チュッ」っていうリップ音を出すシーンことですした。
    うまくできなくてスタジオで困っていたら、雨宮さんと鬼頭さんに「こうやればいいんだよ!」って教えていただいて……休憩中ずっと、スタジオの中の3人で、リップ音を出し続けてました(笑)。
  • ――なんだか本当に『明日ちゃん』のワンシーンのような雰囲気ですね(笑)。ちなみに、アニメの第一話で特に注目してほしいシーンはどこでしょうか?

    村上

    第一話のラスト、明日ちゃんが初めて会うクラスメートたちに「おはよう」と言うシーンです。
    明日ちゃんはそれまで同い年のクラスメートがいなかったから、そんな彼女の言う「おはよう」って、冒頭で家族に向けた「おはよう」とは全然違うんですよね。
    ちょっと緊張感があって……、でも、初めての挨拶だから明るくいきたい。
    明日ちゃんのいろんな気持ちを込めた「おはよう」なので、ぜひ注目してほしいです。

    僕も、そのシーンはアフレコで注目していました。登校して、ガラガラってドアを開けながら言う「おはよう」って、本当であれば一番何も考えていない、自然体の言葉だと思うんです。
    でも、第一話の『明日ちゃん』のシチュエーションだと、まだそうではない。
    もっと意識的に、新しく出会うクラスメートを迎えるための「おはよう」なんですが、この特別な言葉が村上さんの演技によって、どんな音になっていくんだろう……というのが、すごく気になっていたんです。
    村上さんの演技って、聞くたびに「ああ、こういうことなんだ!」って納得させられるんです。
    気付かされる、というか……。だから村上さんの演じる明日ちゃんの声って、ひたすら聞いていたいぐらいなんですよね。
  • ――ちなみに、他の声優さんに演技のオーダーを出されたことはありましたか?

    いえ、「自由に演じてほしい」ということだけですね。
    明日ちゃんもそうですが、「たぶん、この人の出す声だったらバッチリ合うだろうな」と思う方が選ばれていますし、基本的にはお任せです。
    あ、でも「中学一年生だということを意識してくれたら嬉しい」とは言いました。
  • ――村上さんは特技がダンスとのことですが、明日ちゃんも、みんなの前でダンスを披露するのが大好きな子ですよね。

    村上

    そうなんです!
    私も小さいころは発表会に出たりしていたので、そういう部分でも親近感を覚えました。
    今回のアニメでも原作と同様に、明日ちゃんのダンスシーンがあるんです。
    このシーンを演じる時は、みんなに注目されるうれしさや緊張感、パフォーマンスが終わった時の解放感などを思い出しながら演じました。
    ダンスを披露して拍手をもらった瞬間って、すっごく気持ちいいんですよね。
    「私、いまスターじゃん!」みたいな気持ちになれるので(笑)。
    それに、明日ちゃんは中学に入るまで友達に見てもらう機会もなかったはずなので、きっとみんなの拍手を当時の私以上にうれしく感じているんだろうな……なんて想像しながら演じていました。
  • ――明日ちゃんの瑞々しい青春模様、学園生活の様子は、ご自身の学生時代の思い出とも近しい部分があったんですね。

    村上

    そうですね。私も文化祭や体育祭では燃えるタイプでしたし、応援団になってみんなを応援していたのも、明日ちゃんと一緒だなあ……なんて思いました。
    私のクラスにもイベントごとを仕切って盛り上げてくれる子がいたり、クールで運動神経抜群の子が活躍したりしていたので、やっぱり『明日ちゃん』のクラスメートたちに似ているかもですね。
    あと、私自身は自宅通学でしたけど、私の学校にも寮があったんです。
    寮生の友達の部屋まで遊びに行くと、いつも会っているはずの友達が、何だか少し大人に見えてドキドキしたことを覚えています。
    学校では見せないプライベートな部分を見ちゃって、それが嬉しいような、恥ずかしいような感じかなあ……?
    とにかく、そういう気持ちを作品を通じて思い出すことができて、懐かしかったですね。
  • ――他にも、学生時代の印象的な思い出があれば教えてください。

    村上

    私の高校の制服はブレザーだったので、明日ちゃんと同じように、ずっとセーラー服に憧れていたんです。
    私は軽音部でバンドをやっていたんですが、高3の文化祭ではライブがあって……ステージに上がるとき、「チャンスは今しかない!」と思って、衣装でセーラー服を着ちゃいました。
    傍目には上手じゃないライブだったかもしれませんが、でも私たちは思いっきり楽しんだし、お客さんも盛り上がってくれたんですよね。 それが最高の思い出で、今でも当時の写真を見返すくらいです。
  • ――明日ちゃんの学校行事での活躍は印象的ですが、博先生にも同じようなご経験があったのでしょうか?

    僕は中学のころまで、緊張しすぎると声が詰まっちゃったりして、人前で何かを発表することには苦手意識がありました。
    でも、音楽祭のクラス合唱の練習で、先生に教わった通りの発声方法を試したら、思っていたよりずっと簡単に声が出せることに気づいたんです。それで「ああ、これはコツをつかめば誰でもできる技術なんだ」って理解できて、その小さな成功体験のおかげで、自分の殻をひとつ、壊すことができました。
    それからは歌うことに軽くハマってしまって、音楽祭でもクラスみんなが精いっぱい歌ったら楽しいだろうな、と思ったんですが……学生時代の合唱って男子にはテレもあって、消極的なんですよね。僕としては、それが本当に歯がゆくて。
    でも、だからといって自分がみんなを引っ張っていけるわけでもない。
    だから、そういう冷めた空気を壊す子――それこそ明日ちゃんみたいな子がいればいいのに、って思っていたんです。
    そういう気持ちは、この作品の根幹にも通じていますね。
  • ――明日ちゃんのもとでまとまっていくクラスの模様は、博先生の学園生活の理想像の投影でもあるんですね。

    そういう部分もありますね。明日ちゃんって、他人との間に壁を作らない女の子なんです。
    気になることは何でもやっちゃうし、何でも聞けちゃう。
    きっとそういう純粋さって、僕が音楽祭で感じたような、冷めたムードを壊すきっかけになると思うんです。
    「さっきはなんで歌わなかったの?」って、悪意なく聞けちゃう。
    単なる良い子というよりは、好奇心の塊なんですよね。何にでも疑問を持つし、その興味の範囲がとっても広いんでしょうね。
  • ――他にも、先生ご自身の経験が作品に反映されている部分はあるでしょうか?

    強いて挙げれば、自分が大学一年生のときの空気感です。
    明日ちゃんたちが通っている蠟梅学園って、生徒はそれぞれ全国から一人でやってきているんですよ。
    つまり、全員が小学校時代までの人間関係をリセットされた状態。
    だから最初は、初めて同級生ができる明日ちゃんだけが緊張しているわけではなくて、実はクラスメートのみんなも、もしかしたら同じくらいに緊張しているんです。
  • ――明日ちゃんはまず木崎さんや兎原さんと仲良くなりますが、別にそのグループで固定化するわけでもなく、みんなとフラットに仲良くなっていきますね。

    最初に会ったのはたまたま木崎さんでしたけど、他の子だったとしても、その子に興味を持って、仲良くなっていったと思います。
    自分としても、話が進んでいくシチュエーションはごく自然なものであってほしいので、あまりカッチリとした筋書きは作っていません。
    偶然が繋がるようにして、明日ちゃんの人間関係が広がってくれたら嬉しいなと。
  • ――「筋書きを作り込まない」ということは、明日ちゃんの行動やお話の展開は、作者である博先生にとっても予想外のことがあるのでしょうか?

    いつも予想外ですね(笑)。
    たとえば寮の中のシーンを描いていると、「隣の部屋にはこのキャラクターが住んでいるから、ドアを開けたら、たまたま出会って挨拶をするかも」なんて思って、どんどんネームが変わっていってしまうんです。
    そんな調子で予想外のことがどんどん起こっていくので、明日ちゃんがこれからどんな出会いをして、どんな成長をしていくのか、僕にも見当がつかないんですよね。
  • ――村上さんは、原作の『明日ちゃん』について、どういった描写が素敵だと思われましたか?

    村上

    すごく感激して印象深かったのは、女の子たちの脚にきちんと靴下が食い込んでいるところです(笑)細かいところまでリアルに表現されているのに、違和感がなく綺麗な絵になっているのがすごいなあ……、って。
    あと、制服の下って、インナーを着るじゃないですか?
    明日ちゃんが、セーラー服の下でモゾモゾやって、インナーだけを先に脱ぐという描写があるんですけど、この一連のシーンにもすごくリアルさを感じました。
    体型のことでいえば、絵のはずなのにしっかりとした立体感があって、ちょっと肉感的なところも素敵なんです。
    「明日ちゃんの肌は柔らかそうだな」とか、「鷲尾さんは筋肉質でちょっと硬そうかも!」とか、読みながらいろいろ考えちゃいますね。
  • ――明日ちゃんのクラスには、背が高かったり、逆に低かったり、筋肉質だったり、ぽっちゃりしていたり、いろいろな体形の女の子がいるのも印象的ですね。

    僕は、どの顔・どの体型にもいいところがあると思うんです。
    一重なら一重の、二重なら二重の綺麗な人がいますよね。
    ムリにトレンドに近づこうとしていなくても、自分に自信を持った人であれば、それは魅力的に見えますよね。

    村上

    『明日ちゃんのセーラー服』を描くとき、特に意識していることって何でしょうか?

    キャラクターの感情が盛り上がる瞬間、そのときの仕草を逃さずに描くことですね。
    例えば、明日ちゃんが制服を着たり、髪を結んだりして、気持ちを引き締めるところ。
    木崎さんが緊張しながら爪を切っているシーンもそうですね。
    そういう仕草を描くためには、あえて、難しいポーズから描くのが大事なんですよ。
    よく『明日ちゃん』はフェチ漫画だと言われるんですが(笑)、でも僕は単に女の子のパーツを描いているだけではなくて、それぞれの仕草に、彼女たちの感情を乗せているつもりなんです。
  • ――そんな博先生は、日常生活でも他人の仕草や癖を気にされますか?

    めちゃくちゃ気にしますね。特に僕は曲線美や、体のしなりを感じさせるポーズが好きなんです。
    だから例えば、柔らかく綺麗に頬杖をついている人なんかがいると、つい注目しちゃいます。
    そういう好きな仕草って、アイドルのMVで見つけたりすることも多いですね。
    それこそ、村上さんがあるMVで着ていらしたセーラー服も、ずいぶん参考にさせていただきました。
    ああ、こういう脚の動きに合わせて、こんな風にスカートが翻えるんだなあ……とか(笑)。

    村上

    わわ、ちょっと恥ずかしいですね!(笑) でも、ありがとうございます(笑)。
  • ――ちなみにお二人には、ついやってしまう癖はありますか?

    村上

    人差し指と親指の間に顎をフィットさせるのが癖ですかね。
    思っている以上に、すごくフィットするんです(笑)なので喋ってるときとか、悩んでるときは無意識にやっちゃうんです。
    あとは、緊張しているときに両手で首を抑えたりとかしますね。

    僕は両指を組み合わせて、筋を伸ばしたり、ボキボキ鳴らしたりします。
    ずっと絵を描き続けているので、指をリラックスさせたいんですよね。
  • ――実は今回、村上さんから博先生に聞きたいことがあるんだそうです。

    村上

    そうなんです。
    『明日ちゃん』の登場人物の名前がみんな綺麗で印象的だったんですが、名前はどんな風に決めていらっしゃるんですか?

    これは感覚的なものなので、伝わるかどうか自信がないんですが……(笑)。
    自分はまず先に、キャラクターの外観を作るんですね。外観が描けると、今度はその子のイメージカラーが浮かんでくるんです。
    そうしたら、その色から連想する単語を使って、名前にまとめていくんです。
    例えば明日ちゃんの外観ができたときは、イメージカラーは白と黒だと思いました。
    「明日」という苗字は白のイメージから連想した言葉で、逆に「小路」という名前は黒から連想した言葉なんです。
    僕は昔からそうなんですが、ビジュアルや言葉からすぐに色を連想するんですよ。
  • ――お二人にお聞きしたいのですが、明日ちゃん以外で、特にこの子のこういうところが好き、というキャラクターはいますか?

    村上

    明日ちゃん以外だと、兎原さんも自分に似ているかなと思うんです。
    周りを楽しい雰囲気にしたい。
    でも、たまに上手くいかなくて葛藤しちゃう。そんな姿を見ると、「うん、わかるわかる!」って共感しちゃいます。
    あと、もしクラスメートだったら気になっちゃうのが、ロックが大好きな蛇森さん。
    彼女も葛藤を抱えているけど、しっかりと自分を持っていて、周りに流されない生き方をしている。
    それが凄くカッコいいですよね。あと、単純に顔が好みです(笑)。

    『明日ちゃん』の全てのキャラクターには、少しずつ僕に似ている部分があるんです。
    みんな好きなんですが、性格的に近いのは蛇森さん、峠口さん、龍守さんかな。
    蛇森さんは、自分の趣味や世界観を持っていて、クラスメートと共有したいんだけど、その一歩が踏み出せない。
    そんなこところが自分と似ているからでしょうけど、蛇森さんの表情を描くときはほとんど迷わないですね。
    峠口さんも、ちょっと卑屈で自信がなくて、猫背になっちゃうところに親近感を持ちながら描いています。
    ……龍守さんも描きやすいですね。
    小学生の時に「勉強を頑張って、いい成績をとって周りを見返してやろう!」みたいに考えていた時期があったんですが、今思えば、そういう闘志の向け方は作中の龍守さんにそっくりですね。
  • ――ありがとうございます。それでは最後に、このアニメを楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。

    村上

    『明日ちゃん』は、美しい作画や個性あふれるキャラクターたちのリアルな描写、読んでいると心が温かくなっていくようなお話と、とにかく魅力いっぱいの作品です。
    そんな『明日ちゃん』が、ついに映像で動きます!
    私も本編の映像を観たときは、原作を読んでいるときと同じように特別な時間が流れているのを感じました。
    ぜひ皆さんにもご覧いただき、楽しんでいただけたらな……と思います。

    僕はこの作品のアニメ化は難しいんじゃないかと思っていたんですが、明日ちゃん役が村上さんに決まって喋り出した瞬間、「絶対に良い作品になる」と確信が持てました。
    黒木監督や音響監督の濱野さんをはじめ、スタッフの皆さんが僕の意図を汲んでくださり、原作の雰囲気をとてもよく再現していただきました。
    素敵な作品にしていただけていると思いますので、ぜひ、楽しみにしてください。
  • ――ありがとうございました。